重力ピエロ
先日、前々から公開されたら絶対行く!と盛り上がっていた映画
「重力ピエロ」を観に行ってきました。
その日は水曜、レディースディ![]()
女に生まれたメリットを小さいながらも感じ、感謝しつつ最近殆ど
映画はここでしか観ていないというシネコン、ユナイテッドシネマとしまえん
で上映される最終上映に女友達3人で駆けつけました。
何故ここが良いのかというと、比較的人の少ない時間帯にゆっくりと観たい
私が好んで観るのは大抵レイトショーなので、帰りの時間を考慮すると
どうしても車で行ける環境のシネコンがベストなのです。
その点ココは駐車場完備、3時間の駐車サービスチケットが付いているので
帰りの時間を考えず心おきなく車で行けるのが何よりのメリット![]()
しかも新しい事もあって綺麗だし、入り口を入ると漂ってくるポップコーンの
香ばしい香りで無性にテンションアップ![]()
気がつくとバケツポップコーンを買い込んで、夜中のやばい時間にムシャムシャ
食べてます・・・![]()
・・と言う事で、この日もコーラとバケツを抱えながら、ネットで事前予約した
席に着くと再びテンションアップ![]()
何でだろう、ライブでも芝居でも映画でも開演前のこの時間が堪らなく好き
なんですよね。
最近必ず流れるマナーCMに続きいよいよ本編スタートです。
私以外の2人は事前に伊坂幸太郎の原作を読んでいて、それなりに
作品の登場人物に対するイメージはあったようですが、私はこの作品での
奥野家のキャスティングがファーストプリンティングされるイメージでした。
結果的にそれはとても良かったように感じます。
設定は地方都市、仙台。
「おくりびと」や竹中直人さんの新作しかり、最近地方発信の映画が元気で
一点集中都市型だった映画製作が分散され、各地方の文化面が活気づいて
すごく意味がある事だなぁとつくづく思います。
物語の軸になる兄弟はこの二人
兄、奥野泉水役に加瀬亮さん、弟、奥野春役に岡田将生くん。
どちらも好きな役者さんだけに、映画が始まってすぐに兄弟の持つ
独特な透明感に引き込まれ、外見も実際もどこも共通点のないはずの
兄弟2人が、本当に生まれてからずっと寝食を共にしてきた強い絆で
結ばれている兄弟のように見えてくるから不思議。
これは良い役者さん同士だけが起こせる相乗効果というか、魔法です。
内容は幸せそのものだった家族に起きた事件から24年後に起きた物語。
24年前の事件当時に夫婦が出した過酷な選択を家族は強い気持ちで
乗り越え、今の彼らが居る。
彼らは自分たちを「最強の家族」だと言い、たった4人の小さいけれど温かで
穏やかな集合体を心の奥から愛していた。
それが数年前に美しかった母(鈴木京香)が不慮の事故で他界。
それでも、穏やかな父(小日向文世)を中心に家族の絆は均等をとれている
ように見えていたが、弟春の心の底ではゆっくりとある思いが増殖し始めていた。
そして仙台市内で起きた連続放火事件を機に、静かだったはずの兄弟の身辺が
にわかに騒がしくなってゆく・・・・
・・といったのが大筋なんですが、多少なりともサスペンス要素のある映画の
あらすじを紹介するのって結構大変ですね![]()
見終わって思ったのが、人が裁かれる形としてこういう結末があっても良い
んじゃないかということ。
デスノートのような過激さはないけれど、春が親から受けた愛情が深ければ
深いほど、人間が起こした最も卑劣で許し難い行為の象徴である人間を、
自らの手で裁きたいという衝動に駆られるのは分かる気がする。
その裁きたい対象物に春自身も含まれているのが、何ともやりきれない所
だけれど、そうでないと春の中に増殖した負の熱を抑える事は出来ないのだ
ろうなとも思った。
もし春という人間がこの家族以外の環境で育っていたとしたら、もうとっくに
自分を壊していたのではないかと思うくらい、春にとって兄を始めとする
家族の存在は大きい。
余りに突飛すぎて誤解を招いてしまう春の行動も、至ってニュートラルな
兄の存在で中和され、春の中でいつの間にか正当化されているのが
観ていて何だか可笑しい。
意図的にそういう役を選択しているのかは分からないけれど、兄を演じる
加瀬さんは見た目の線の細さとは反対に、結果的にいつも誰かを
支えている役が多いように感じる。
繊細な包容力というか・・上手く言い当てた言葉が出てこないけれど、
作品の中での身の置き方がすごく押しつけがましくなくて品があって良い。
作品の選び方も好きだし、どの作品を見てもやっぱり好きだと思える
数少ない役者さんの一人です。
いつも実年齢よりも若い役を演じる事になる事が多い加瀬さんですが、
今回もそう。
弟役の岡田君とは実際に15歳離れているのですが、スクリーンの中での
2人は何の無理もなくそう見えるのが役者の力、凄いです。
弟役の岡田君は「ホノカアボーイ」に続いて2作目の鑑賞と
このところ続いていますが、それも「ホノカアボーイ」での彼の
魅力に親友のMちゃん始め私もちょっと惹かれてしまった・・・![]()
って事も大きいかな。
まだ彼の作品はこの2作のみですが、受ける印象はやっぱりイノセント。
そういう意味ではこの兄弟2人に共通する惹かれる要素として、
私の中でこのイノセントという点は大きいのかも知れません。
美しい外見だけで選ばれた訳では無いと思っていても、やはり
彼の美しさは春を演じるには必要不可欠。
その上で脆さと強靱さを併せ持った春のキャラクターを演じる事を
求められた岡田君の頑張りは、作品の中で見事に結実していると
思います。
すでに次のクールでのドラマの主演が決まっているとか。
精神的に消耗されすぎない程度に忙しく、これからも良い作品に
恵まれると良いね、岡田君。
今度は地毛のクルクル天然パーマでよろしくね。(だって可愛いから)
この先も母の目線でずっと見守ります(笑)
「俺たちは最強の家族だ」
台詞だけを聞けば、すこし嘘臭くも感じるこんな台詞も、
物語の中の家族が背負った過酷な選択の事を思うと、父親がそう
言い放つのも分かるような気がします。
相手への憎悪が自分自身を支配してしまうのが当然かと思うような
その時に、敢えてそれを受け入れた家族だからこそ胸を張って
そう言い切る事が出来た。
ラストのサーカスのシーンで、空中ブランコから落ちそうになるピエロを
不安げに見上げる幼い春に、ピエロの顔を観てごらん、楽しそうな顔を
しているから大丈夫だよ、と言って優しく春に語りかける母の姿は、
過酷な運命を敢えて受け入れた人間だけが知り得る特別な世界があって
初めて嘘臭くなくなるのだろうとも思えてくる程重い。
エンドロールの前のシーンは少し哀しいけれどひたすら優しく、もうそこには
居ないはずの家族も確かにそこに存在しているのだと思えるような穏やかな
静寂が流れている一幕でした。
この兄弟の行く道がどうかこのまま穏やかであれと、心の奥から願わずには
いられませんでした。
上に貼り込んだポスターの写真(撮影:杉田知洋江)にも共通する
薄いブルーの映像世界。
これがこの映画から受ける色彩の記憶です。
この映画だけに限らず、日本映画のあるジャンルとして透明感のある
サラッとした質感の映像の傾向が今の日本映画にはあると思います。
本作品の森 淳一監督の作品に「Landry」がありますが、これもその
世界観にまるごと包まれている印象を受ける作品で、やはり薄いブルーの
印象が強く残りました。
どこか漫画の世界や現代作家の小説の世界に共通するこの作品の
傾向が生まれたのがいつ頃なのかは分かりませんが、日本映画の
ひとつの大きなジャンルを形成しているのは確かでしょう。
「性」の匂いの薄さというか、乾いた質感の映像世界はある意味
今の日本の一面が反映されているんだなぁとこの作品を見て感じました。
次の映画鑑賞の予定は「ハゲタカ」
ドラマで虜になった作品だけに、採点は厳しいですぞ〜
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コメント
お久しぶりです。
劇場で見逃していたこの作品
やっとDVDで観れました。
しみじみと,ほのぼのと,静かに感動しました。
>人が裁かれる形として
>こういう結末があっても良いんじゃないかということ。
わたしもそう思います。
私刑は実はよくないことかもしれませんが
「この問題についてお前ほど考えられる人間はいない」
という兄の言葉に
「うんうん,そうだよね・・・」と思わず頷いている自分がいました。
岡田君,この作品で初見でしたが美しい子ですね~
加瀬さんは前々から好きな俳優さんで
案外彼氏や息子としてはこんなタイプが好みです。
でも岡田君と加瀬さんが15も年の差があるなんて驚き~
映画ではまったく違和感なく年の近い兄弟に見えました。
投稿: なな | 2009/11/08 21:47
>ななさん
どうもお久しぶりです。
「重力ピエロ」ご覧になったんですね。
人の道理としては「法」の下で裁かれ
なくてはならないというのは判っていても、
どうしても人が起こす事件の裏には、それでは収まりきらない、
人の感情や思いがありますもんね。
この映画はそれを深く考えさせてくれる作品でした。
加瀬さん、良い役者さんですよね。
見た目とは違うアグレッシヴな人柄にもとても惹かれます。
また遊びに来て下さいね。
投稿: lou_tan | 2009/11/13 11:32